『孤高のメス』はまじめな医療映画。オススメ
昨日は14日ということで、TOHOシネマズが1,000円で鑑賞できる日なので、昼間から映画を見に行きました。鑑賞したのは 6月5日公開の映画「孤高のメス」。平日なのにわりと観客は多かったです。医療関係者がたくさん来ているのかもしれませんね。
堤真一が演じる外科医が、地方の公立病院に赴任します。ところがこの病院は大学病院から派遣される医師を中心として、まじに医療行為をしない医師ばかり。ときには患者が見捨てられ、犠牲にされています。
そんな中、主人公は一人一人の命を救うことに全力を尽くしていく。その姿に周りのスタッフや医師たちの姿勢も変わり始めます。主人公はブラックジャックのようなスーパー外科医ではなく、丹念に手術をしていくまじめな医師として描かれています。
そんな中で起きたある出来事により、患者の命を救うには脳死肝移植しかないという状況が生まれます。この映画で描かれている当時は、日本では脳死は人の死ではないとされていた頃を描いています。つまり脳死状態の患者から臓器を摘出することは殺人罪が適用されかねないのです。
そのような中で主人公は脳死肝移植に踏み切りますが……
という映画です。悪役っぽい人も出てきますが、ストーリーは単純だし、エンターテイメント性はあまりない純粋にまじめな映画です。しかし、感動しました。
医療モノの映画だと不自然にかわいいナースが出てきて逆に興ざめしたりしますが、この映画で描かれる夏川結衣が演じている看護師や他のスタッフはわりと自然でした。逆に市長と事務長は演技が大袈裟に感じましたね。やり過ぎです。
でも、私も医療機関に勤務していた経験から言うと、手術がきれいな医師というのは本当にカリスマ性があります。難しい手術もこなしていくひの原動力はどこにあるのか。それは医師一人一人違うと思いますが、やはりスタッフが付いていきたいと思わせる医師とそうでない医師にはあきらかに違いが感じられるものです。
この映画は脳死移植を肯定的に捉えた映画とみてしまうのはあまり面白くないと思います。確かに脳死を人の死とする改正臓器移植法が成立する前にこの映画が公開されていたら、脳死肯定派による作為的な映画と受け止められていたかもしれません。しかし、脳死=死の是非を置いてみて観ると素直に感動できる映画だと思います。
個人的に脳死による臓器移植について言えば、ずさんな脳死判定による誤診の危険性があるので賛成できかねるというのが本音です。この映画でも本当に脳死なのか、主人公が判断し説明している場面が出ています。改正臓器移植法が施行されたからといって安易な脳死判定がなされないように注意していかなければなりません。
それにしても堤真一は「クライマーズ・ハイ」に続いて主役としてこういう役柄をつとめていますが、似合っていると思いました。
原作は大鐘稔彦の『孤高のメス―外科医当麻鉄彦シリーズ』で、全6巻の小説です。実はこれには更に原作があって、高山路爛原作、やまだ哲太画による『メスよ輝け』です。高山路爛は小説化にあたり本名の大鐘稔彦で執筆したそうです。漫画と小説、どちらかは読んでみたいですね。
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