富山県水墨美術館 田渕俊夫と日本画の世界

2022-5-2 00:17

富山県水墨美術館で開催されている「美をつなぐ ― 田渕俊夫と日本画の世界:メナード美術館所蔵作品による」を観に行った。この日は雨模様で人でも少なめ。

富山県水墨美術館

企画展の内容は日本画の田渕俊夫を中心に、菱田春草、横山大観をはじめ、平山郁夫、東山魁夷、高山辰雄らの作品が並んでいた。これが愛知県にあるメナード美術館のコレクションで、田渕俊夫氏の作品はその中核を成しているとか。

あまり事前の知識はなく観覧したが、田渕俊夫という人は日本画家でありながら、植物を中心とした風景画から、現代の都会の風景、そして水墨まで、何でも画けてしまうのではないかと思わせる天才的な画家だと感じた。とくに感動したのは平成に入ってから制作された、プラチナ砂子を用いた「遠い思い出・家路」。そして「春爛漫」「明ける」などの小さな作品群。プラチナ砂子の煌めきと、鮮やかな色使いが新鮮だった。日本画は輪郭線を描くが、田渕俊夫は線を最小限にして、デッサンでも不要なものは画かなかったらしい。これらの作品は輪郭線が見られない。

屏風もなかなか壮観で、四曲一双の「煌」は金泥と金砂子による美しくまとまったもの。

それと並べて平山郁夫の「紫宮観望」も見事。こちらは六曲一双で夕暮れ時の中国の紫禁城を描いたもの。金色の空が見事だが手前に連なる屋根を紫色で表わしているところがすごい。あとは加山又造の「音」というタイトルで猫を描いた作品がよかった。

今回は常設展示室にも田渕俊夫の「杉図」が展示されている。これは永平寺に奉納した襖絵のうち一部を抜き出して屏風として仕立てたもので、以前に水墨美術館で田渕俊夫氏の企画展が開催されたあとに寄贈されたものだそう。墨の濃淡だけで表現された、霧に覆われたうっそうとした木々の表現が見事と言うしかない。

また常設展示でも東山魁夷の「山・海」の着彩屏風(展示は半双)など面白い作品が並んでいた。これは太い線と豊かな色彩が印象的でどこかセザンヌのような雰囲気の不思議な作品で意外性があった。

そして川端龍子の「寒雷」が暗い墨空に富士山が白く浮かび、金泥で描かれた稲光の迫力があってよかった。

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