笹田昌宏『ダルマ駅へ行こう!』

2010-7-17 22:16
ダルマ駅へ行こう!

廃車となった貨車や車掌車は払い下げられ、改造されて倉庫や休憩室などに利用されている。これらの貨車は手(連結器)と足(車輪)が取り払われてしまっているので達磨大師になぞらえて「ダルマ貨車」と呼ばれる。このサイトでも「廃貨車の記憶」というシリーズで取り上げている。

そのような廃貨車を、駅舎として活用している駅が存在する。名づけて「ダルマ駅」。国鉄末期、輸送体系の見直しなどで大量に余剰になった貨車を、各地でローカル線の駅舎に転用した。そのような駅を網羅したのが『ダルマ駅へ行こう! 』である。

題名だけ聞くと、同じ小学館文庫から牛山隆信氏が出版した『秘境駅へ行こう!』の続編のように思えるが、本書は『「ボロ貨車」博物館 出発進行!』などの著書がある笹田昌宏氏。「ふるさと鉄道保存協会」の理事長をつとめるなど、保存鉄道にも尽力されているお方。

本書は3部構成となっている。1つは、北海道にはダルマ駅がたくさん見られるが、そのすべてを一週間の強行スケジュールで撮影した記録。次に本州・九州各地のダルマ駅の探訪の記録。最後はダルマ駅に魅せられた著書が、中古のダルマ貨車を購入し別荘として備え付けるまでの奮戦記だ。廃貨車好きの私としては非常に興味深く、一気に読破してしまった。

国鉄末期に増えたダルマ駅も、平成の今となってはその数が減少しているとのこと。興味のある方は早めに探訪したほうが良さそうだ。私がダルマ駅を見たのは飯山線の信濃平駅だけだが、この本を参考に遠征したい気分にさせられてしまった。

駅にまつわる本はたくさんあるが、本書のようにダルマ駅だけに絞って取り上げたものは他にない。鉄道ファンや旅行好きの方にはお薦めできる一冊だ。

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