富山県立近代美術館「可能性への挑戦 池田満寿夫の版画」

2010-5-13 22:04

富山県立近代美術館で開催中の企画展「可能性への挑戦 池田満寿夫の版画 京都国立近代美術館所蔵 M&Yコレクション」と常設展を見てきました。

富山県立近代美術館

日本人として初めてニューヨーク近代美術館で個展を開いた、世界の「池田満寿夫」の初期から晩年までの300点もの作品を展示するという内容です。

版画は年代ごとにおおきく三期にわけて展示されており、第一期(1956~66年)、第二期(1966~96年)、第三期(1976年以降)となっています。膨大な展示ですが、一通り見てみると、多用な表現や技法が用いられていることが分かります。

初期の作品では、ミニチュアールに代表される精巧な銅版画や、ドライポイントによる線描作品が多いですが、目を惹かれたのはモンドリアンの抽象画のような色彩の「女の肖像(1960)」や英文の書かれた紙を下敷きにするというコラージュを用いた「Tの肖像」「蛾あるいは踊子」といった作品です。

ドライポイントとルーレットを用いた「小さな、小さな空間」や「樹木」という作品も目に留まりました。赤・黄・青が印象的ですが、目録によると「樹木」には別の色で刷った版画が存在するそうです。

第二期になるとニューヨークで個展を開いた時期ですが、この頃には「マグリットの空(1968)」「ブダペストからの自画像(1968)」などの作品が印象的です。マグリット作品のような明るい空が、立方体の部分にのみ存在するという絵を、リトグラフで表現しています。この頃は抽象的な全体の一部に、写実的な具象が存在するような表現になっているようです。

1975年ころのメゾチントによる作品群は、非常に暗い色彩でコントラストも低く、まったく別の画家に寄るものかと思えるほど作風が異なっています。第三期以降の作品も年代ごとにまとめられていましたが、それぞれが個性的な別の作家のようで、作品の広がりがすごいなあと感心させられました。

第三期はエロスを謳歌するリトグラフ画集『ミクストフルーツ』からの作品群が多数展示されていましたが、個人的には細い震えた線で書かれた女性を見ても不安定な感じがして、これはむしろ目を背けたくなりました。

「昼と夜の間(1981)」など、人物の顔を描いた作品群は、ピカソなどのキュビスムを思わセル、平面の中に立体を再構成した表現です。抽象画からシュールレアリズム、キュビスムと幅が広いですね。

晩年の作品群は一転して濃い色彩が使われているものも多く「天女乱舞」などは非常に抽象的であり、かつ鮮やかな色彩が用いられています。ただ版は荒いというか雑な印象があります。(あくまで素人の感想)

一方で「一羽の鳥(1989)」「見つめあう鳥(1989)」「タンゴ(1990)」などのリトグラフ作品は原色に近い色遣いながら、きれいな版であるように感じました。

最後に会場中央にある大きなリトグラフ「宗達賛歌(天)」。これはパンフレットによれば世界最大のリトグラフら挑戦したものなのだとか。非常に迫力がありました。

会場は狭いですが、作品の両が多く、見るのになかなか時間がかかりました。企画展は6月27日まで開かれています。企画展の料金で常設展Ⅰ~Ⅳも見ることができますのでかなりお得ですよ。

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