富山県立イタイイタイ病資料館 開館10周年記念講演会

2022-4-30 10:00

四大公害病の1つであるイタイイタイ病の資料を展示している富山県立イタイイタイ病資料館が開館10周年ということで、宇宙飛行士の毛利衛さんを招待しての特別講演会が開催された。今回事前申込をして参加してきた。当日はひどい土砂降りの中、イタイイタイ病資料館に車で向った。


イタイイタイ病は、神岡鉱山から流れ出たカドミウムにより神通川流域で発生した公害病。骨がもろくなり身体中に痛みが走る。患者がイタイ、イタイと訴えることからその名前が付いた。

まず語り部の小松雅子さんの講話。小松さんの父・小松義久さんは、イタイイタイ病対策協議会の初代会長で、神岡鉱山に対する訴訟に尽力された方。その課程では住民からの嫌がらせや脅迫電話もあったとか。貴重な体験を護身氏の言葉で語るととても重みがある。イタイイタイ病については教科書で学んだが、講話や資料をつうじて公害病への関心が深まった。

そして毛利衛さんの講演。はじめて宇宙に行ったガガーリンの話から。そして冷戦下の宇宙開発競争の話。冷戦は終わったはずなのに、いまロシアがウクライナに侵攻している現状を思うとやりきれない。子どもの頃にテレビでガガーリンのことを知った毛利さん。そしてアポロが月に行く。しかし当時は軍人しか宇宙に行けなかったが、結果的には研究者として宇宙に行った毛利さんはすばらしい。基本的には日本は軍人が行かないということを仰っていたが、日本は平和利用を考えているということが現われていて素晴らしいと思う。

毛利さんは宇宙で様々な実験をやったが、基本的には他の研究者からの依頼をこなしているだけだそうで、個人の実験としてやったのが無重力で浮いてい水玉に桜の花びらを入れて「宇宙水中花」を作る実験。これは楽しい上に日本ならではの美しさを感じる実験だった。そしてやはり美しいと評価されたらしい。

他には実験で見ている細胞の顕微鏡画像と宇宙ステーションの窓から見たオーストラリアの地形が相似に見えた話などが面白かった。

さて、今回は「宇宙から見た私たちの環境と未来」という演題で、宇宙と環境の話。2000年に2回目の飛行をしたときに NHK とソニーが作ったハイビジョンカメラで撮影していたときのこと。冬の地上は雪で覆われて白かったが、中国の人が住んでいるところは黒かった、というもの。カナダやトルコの上空でも都市が見えたが、白くはなかった。(写真ではグレーのように見えたが中国のような黒さではなかった。)北海道出身の毛利さんはそれが石炭の煤煙によるものだとすぐに悟る。中国は2000年になっても石炭が燃料として広く使われていたためだろう。

オーロラは中の空気が宇宙放射線から守ってくれるという話も知ってはいたが宇宙飛行士の方から聞くと説得力がある。

そして毛利さんは意外なことを言う。地球の人口は増え続けているが、急激に減るのではないかというのだ。それは核戦争の脅威だけでなく環境問題や伝染病も要因だと警鐘を鳴らした。

講演の最後で出てきた WHO の One Health という概念が大切だと感じた。人間・生物・環境のすべての持続を考えなければならないと理解した。そして、人間がいなくても惑星は存在し続ける。人間が地球を救うというのはおこがましい、謙虚でいたいということを仰っていた。たしかにその通りと妙に納得した。すきな言葉が「まほろば」だということも。

公演後はイタイイタイ病資料館を見学(無料)。イタイイタイ病の原因がわかって公害と認定されるまでの歴史や、その後どのように土地を再生して食べられる米を再び栽培できるようになったのかなどが詳しく解説されていた。また当日は春の特別企画展「カラーで甦るイタイイタイ病の記憶」も開催していた。白黒の写真を AI で着色するものだが、本当にこの手法はすごいなと思う。リアルに感じる。

それにしても富山県のホームページはリニューアルしてからというもの、過去のイベント情報などをすぐに消して検索してもたどれなくなってしまう。きちんと資料として残すべきであろう。

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